FIREに向けて資本主義の終焉をどう捉えるか【書評:資本主義に未来はあるか】

経済

FIREは、資本主義が継続し金融資本が増殖し続けることを前提に4%ルールが組まれています。

資本主義は危機を向かえても約500年続いていますが、未来にどうなるかは誰にも分かりません。

「資本主義に未来はあるか─歴史社会学からのアプローチ」を読んで、何が資本主義の危機要因となりうるのかを記事にしました。

【本書から得たFIREへの教訓】

  • 急拡大する金融資産が実態をともなっているかは常に見張る
  • 財政危機での国防力低下が、資本主義崩壊への革命に繋がるかもしれない

 

資本主義の継続

危機が生じても、政策調整や技術革新が資本主義の刷新をもらたしてきました。

しかしこれまで500年続いてきたからと言って、永続性があるかは分かりません。

1970年代からの西欧の景気大後退は未来を考えるうえでのヒントとなりそうです。

 

苦し紛れに始まった新自由主義

産業革命により新しい便利なものが続継ぎと生まれ、それらがドンドン売れることで先進国は経済発展を遂げてきました。

しかし西欧では1970年代にそれが鈍化します。

馬車が自動車に変わったのは革命的でしたが、新型自動車が出ても焦って買い替える必要がないわけですから。

 

物の売れ行きが悪くなり利益が減ってきた資本家は新自由主義に舵を切りました。

新自由主義の特長は以下です。

  • グローバリゼーション
  • 規制緩和
  • 緊縮財政
  • 下層から富裕層への再分配

 

自国の労働者の単金が上がって利益が減ってきたので、賃金の安い海外に仕事を移しています。

また税制を誘導して、富裕層の税金を減らし、労働者の税金を上げることで富を吸い上げています。

つまり富裕層が自国の労働者を切り捨てて、自分たちだけ多くの利益を維持しようという流れです。

 

管理人
管理人

資本家に悪意があるというより、資本主義の本分が資本をひたすら増やし続けることのみのため、こうなってしまう仕組みと捉えるのが適切そうです。

 

新自由主義の弊害

新自由主義による資本主義の継続は以下の弊害をもたらしています。

  • グローバルな不平等の拡大
  • 政府・家計の負債の拡大
  • 資本主義は巨大な富を算出するが、貧困と環境汚染といった悪を副産物として生み出す

裕福な国と貧乏な国という線引きではなく、世界を通して裕福な人と貧乏な人が居るという状態になっていっています。

 

アメリはGDP世界1を維持し景気は良さそうに見えますが、政府も庶民も多額の借金をすることにより大量消費を維持しています。

世界の基軸通貨がドルのために大量の借金をしても成り立っていますが、リーマンショックのような金融危機を再発する爆弾を抱えています。

 

オフショアがいつまで続くか

グローバリゼーションで安い労働賃金の国を移り替わっています。

日本→韓国→台湾→中国・インド→東南アジアという感じで。

全世界の国が発展し賃金が上がるとそこで終了となるのですが、アフリカ、中央アジアはまだ対象になっていないため21世紀末までは継続される見込みと本書には書かれていました。

 

賃金の安さではなくイノベーションを起こせというもっともな話が出てくるわけですが、そもそもそのイノベーションが起こせずに新自由主義でオフショアに走っていたわけで、その時点で資本主義の継続は大きな壁にぶつかりそうです。

 

資本主義の危機要因

新自由主義の元での資本主義がもたらす、グローバルな不平等の拡大と政府・家計の負債の拡大がどのような危機要因となるか見ていきます。

 

金融危機

金融商品は1970年代は、投資資産のうちの25%だけでした。

2008年には、それが75%まで増加しています。

その額は全株式の価値総額の約4倍で、世界のGDP総額の10倍です。

 

欧米で物が売れなくなった後、アメリカは金融商品をどんどん作り世界のカジノとしてお金を世界中から集めて、基軸通貨としてのドルとGDP世界一を維持していると他の書籍で読んだことがあります。

 

オルタナティブ投資に関しては、1990年代は50兆ドルでした。

それが2008年には600兆ドルと急増しています。

投資先がなくオルタナティブ投資はリスク回避ができていると信じた人たちが、リーマンショックなどの金融危機で大きな被害を被っています。

 

管理人
管理人

今後も経済成長が続き株価も世界全体でみれば上がることに賭けてインデックスファンド投資をしていますが、実態と離れたただの数字遊びに資本主義経済がなっていないかは見張っておく必要があるかもしれません。

不平等の拡大で革命は起こる?

マルクスは資本論で、資本主義が進み不平等が拡大すると労働者階級が怒りで革命を起こすと書いています。

毎日毎日働いても食事もままならないワーキングプア、またはAIの進化で低賃金の仕事すらなくなってしまうかもしれません。

飢え死にしそうになった人が革命を起こすというのはありそうに思えますが、歴史を振り返ると革命は上級中産階級が主導してきたと本書には書かれています。

 

  1. 国家の財政危機で国防が弱まる
  2. 財政危機への対処法についてエリート内で内部分裂が起こる

この流れで革命は起きてきたといいます。

実行部隊が労働者でも、エリートが先導するから革命が引き起こされるということですね。

 

管理人
管理人

不平等の拡大が良いとはとても言えませんが、資本主義の継続という観点では国家の国防力(抑止力)が資本主義を崩壊させる革命の発生の指標となりそうです。

 



まとめ:FIREに向けて資本主義の終焉をどう捉えるか

1970年代からの景気大後退を受けて、欧米は新自由主義を始めました。

安い賃金をオフショアに求め、低層から高所得層に資産を吸い上げることで、資本主義の原理である資産の増加を維持しています。

資本主義は危機を向かえても約500年続いていますが、未来にどうなるかは誰にも分かりません。

 

FIREは、資本主義が継続し金融資本が増殖し続けることを前提に4%ルールが組まれています。

お金のために一生こき使われて嫌な仕事をするのは散々だという思いからFIREは生まれたと考えると、資本主義が崩壊しても満足に働ける社会が返ってくることに期待すれば、そんなに悪い状態ではないのかもしれません。

資本主義の崩壊で北斗の拳の世紀末のような無法で暴力が全てを支配する世界がやってきてはたまらないので、安全は維持されることを望みます。

 

【本書から得たFIREへの教訓】

  • 急拡大する金融資産が実態をともなっているかは常に見張る
  • 財政危機での国防力低下が、資本主義崩壊への革命に繋がるかもしれない

 

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