スキルアップで労働者全体の賃金は下がる【武器としての資本論】

経済

「スキルを上げて労働者が市場価値を高めていく」ことは当然とこれまで思っていました。

しかし、この思想は「スキルがなく資本を増やせない人間には存在価値がない」と考えているとの同じであると書籍[武器としての資本論]に書かれているのを読んで、ハッとしました。

 

資本主義社会の仕組みとして、働いてお金をもらわなければ基本的には衣食住が成り立ちません。

だからといって働けなければ死んでも止む無しというのは思想が毒されていたように感じます。

例えば働く能力は低いけど、居るだけで周りの人を和ませる人がいたとして、金銭的価値は低いことになりますが存在する価値は大きいと思います。

人は存在しているだけで価値があると信じられる社会である方が、人は幸せに働いていけるのではないかと思います(今はその真逆でうつ病だらけ)。

 

スキルを上げれば一時的に収入が増えますが、労働の供給過多となりいずれ労働者全体の収入が減ります。

新商品が価格競争で次々値下げしていくように。

人口の1%の資本家のために残り99%の労働者が身内で競い、資本主義を自滅に向かわせていることは人類の賢い選択とは思えません。

まずは現状を学んでいくことが大事だと考えています。

 

本記事では[武器としての資本論]を参考に、経済の歴史と資本主義の性質について書きました。

【本書から得たFIREへの教訓】

  • 搾取されながら働き続ける人生からは、FIREして外れる
  • FIRE後は、資本主義的には無駄と言われるけど幸福度を高めてくれることをすると良いかも

 

経済の歴史

封建時代

封建時代は、主人と召使いであったり、領主と小作人であったりと身分が固定化されていました。

職業の自由がないというのは現在よりも酷いように思えますが、労働者が働けなくなると雇っている側が困ることになるので、労働者の衣食住は保証されていました。

 

それと比べて現在は、労働者の変えはいくらでも効いてしまうため、契約期間が終わったらその後の生活の事は知らんという残酷な状況になっています。

不況下の派遣切り等は酷い例の典型です。

 

江戸時代

  • 大工職人は、1日4時間労働
  • お侍さんは、一勤二休

江戸の人々は、現代人より全然働いていない!!

生産性は上がっているのに働く時間が長くなり不幸になっているのは、完全に何か間違っていますね。

 

お金がなくなったら、しかたない働くかという日々を送っていたそうです。

手に職があって、いつでも仕事をできるというのが肝ですね。

管理人
管理人

現代人の多くを締める雇われ人は、1度職から離れると仕事に戻れないかもしれない可能性が高く、嫌でも働き続けないといけないところが辛いところです。

 

昭和

昭和には、農村で食べていけなくなった若者か街に出てきて工場で働き始めます。

酷い労働条件、安い賃金で搾取されるものの、それでも若者は街に出たかったそうです。

村社会での窮屈な人間関係が嫌で自由を求めてのことでした。

 

格差を拡大させ地球資源を使い尽くそうとしている資本主義を辞めるにしても、村社会に戻すというのはどうも幸福ではなさそうです。

 

↓村社会の息苦しさは「0円で生きる」にも書かれていました。

 

「人新生の資本論」の著者:斎藤幸平氏は村社会に戻すのではなく、商品にすべきではない公共性の高い物を共同管理することを提唱されていて興味深いです。

 

20世紀後半

20世紀後半は格差が縮小していく時代でした。

労働者が消費者だったため、労働者が貧しくなると商売が成り立たなくなります。

フォードが自動車の値段を下げ、労働者の賃金を上げて売り上げを伸ばしていったことからフォーディズムと呼ばれていたそうです。

 

封建時代の、領主と小作人の関係の復活ともみえます。

しかし現在、格差は再び拡大しています。

それが何故かを次に見ていきます。

 

資本主義の性質

資本主義とは、余剰価値を高め続ける運動です。

安く作って高く売った差分が、余剰価値です。

安く作るには安い労働力が手っ取り早いとなります。

 

日本が高度経済成長したのは、日本が貧しく日本人労働者の賃金が安かったからです。

日本が経済成長すると、韓国→台湾→中国→東南アジアと労働者の市場は移り変わっています。

豊かな国と貧しい国という格差が、余剰価値を生み資本主義を支えていると言っても過言ではありません。

 

生産性を上げる

賃金を下げられないならば、生産性を上げて安く作ろうという話が出てきます。

職人が一人一人作っていた時代と比べると、工場に人を集めて機会も導入することで生産性は格段に上がりました。

しかし生産性はどこまでも上がるというものではありません。

 

頑張って生産性を上げても他者が追随し価格競争となり、余剰価値は減っていきます。

PDCAサイクルは生産性が上がらなくなった社会の苦肉の策だと著者は言います。

生産性を上げるアクションが出てこないなら、先にプランを立てて何度も挑戦しろという。

無意味な計画を作り続けることになり、それがブルシット・ジョブとなっています。

 

イノベーションを起こす

生産性をちまちま上げるのが無理ならば、イノベーションを起こせる人材を育てなければならないという議論がアメリがで起こりました。

現在のGAFAMの台頭はその効果と思われます。

しかしめったに起こらないからイノベーションなのであり、株主(資本家)と労働者の格差は益々拡大するばかりです。

 

実質は奴隷制

職業選択の自由があり、表面上は奴隷はいないことになっています。

しかし生産手段をもたない我々は、労働力を売るしか生活の術がありません。

企業と労働者の双方が合意した時に労働が発生するとはいえ、その関係性は平等ではありません。

 

資本による労働者の支配です。

 

賃金は、労働者がまた明日も働けるようにするための再生産の額が支払われます。

安いファストフードを食べて、狭いシェアハウスに住めばいいじゃないと賃金を下げてくるわけです。

 

労働者自らが望んでそのような生活をしているのであればよいのですが、賃金が安すぎて選択の余地がないという状態は、もう奴隷と等しいです。

資本家による密かな階級闘争には抗わねば、労働者は飢え死にまで追い込まれるかもしれません。

FIREして資本家の元では働かないというのは、資本主義社会への一種のレジスタンスであると思います。

 

格差の拡大

物は世界中に行き渡れば、売れなくなります。

イノベーションも頻繁に起こせるわけではないので、新しい商品は簡単には増えません。

そうすると価格競争となり、余剰価値を高めるために労働者の賃金を下げる圧力が強まります。

 

20世紀後半とくらべて企業に余裕がなくなっています。

またソ連の崩壊により共産主義というライバルが消え、資本主義が暴走しています。

労働者は消費者でもあるため、賃金が下がれば商品が売れなくなります。

そうすると資本家も労働者も最終的に共倒れになるのですが、格差が是正される予兆はありません。

 

↓日本がデフレから脱却できないのがこの典型です。

 

歴史的に、格差が拡大すると貧困層が飢え、革命が戦争が起こり格差のリセットがなされてきました。

そうなっては全人類アンハッピーなので、数の多い労働者が団結して資本家と階級闘争をしていくのが崩壊に向かいつつある資本主義をソフトランディングさせる術ではないかと思います。

 

まとめ:スキルアップで労働者全体の賃金は下がる

生産性を上げる、イノベーションを起こすというのは労働者としての当然の勤めと思ってきていましたが、それが返って労働者全体の賃金を下げるように働いています。

個人では一時的にでも賃金を上げた方が得なのですが、全体の賃金を下げることになるので合成の誤謬ですね。

 

何でもかんでも商品化する資本主義社会は、いずれ空気すら商品にして貧困層は窒息死するというディストピアが訪れたら悲劇以外のなにものでもありません。

封建社会や江戸時代は、生産力を敢えてセーブすることで、人類の成長と安定のバランスが今よりも取れていたように思います。

1人でどうこうできる問題ではないですが、人口の99%は労働者なので民主主義国家においては団結したら資本主義の自壊を避けられるのではないかという期待は持っています。

 

  • お金に価値観を支配されない
  • 生涯使う以上のお金を求めない、必要以上の仕事(資本を増やす行い)をしない
  • 何でも商品化する流れに抵抗する(買わない)

この辺りは個人でできるので意識して取り組んでいこうと思います。

 

FIREし後は、値段は付かないけど価値のあること(資本主義的には無駄と言われるが幸福度を高めてくれること)をやっていくという夢にも繋がりそうです。

 

【本書から得たFIREへの教訓】

  • 搾取されながら働き続ける人生からは、FIREして外れる
  • FIRE後は、資本主義的には無駄と言われるけど幸福度を高めてくれることをすると良いかも

 

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